STORY

 

 

北アルプスの雪解け水が流れ込む麓。中学校の夏休みに釣具屋で見つけた竹ヤスを片手に潜り始めたことが出発点。魚を突こうとすると、潜るたびに知らないことがたくさん出てくる。いくら釣り糸を垂らしても釣れない魚が悠々と泳いでいたり、誰も気に留めない意外なところに意外な魚がいたり。そしてそれを、自由に泳ぎ回って自分自身で見つけていく。それが楽しくて、いつも海のことばかり考えていたのだろう。

 

道具を作り始めたのは、その延長線にあった。大学・大学院で学んだのは機械工学。機械工学系の学科は、工作機械や実験材料が豊富に揃っている。こんな環境を生かさない手はない!と思い、研究室の片隅でこっそりと手銛を作り始めた。実験材料を勝手に使っているところを教授に見つかってしまったが、完成した手銛で魚を突いてきたところだけは感心していた。大学院修了後はメーカーで商品開発に従事。その時も魚突きから離れられず、休憩時間になると加工のプロに相談しながら手銛の部品を削ったりしていた。

 

2020年。自作の手銛を見た友人から言われた「俺の分も作ってよ」。そんなちょっとした依頼からAUKZEALは始まった。それも、1本だけ作るのも逆に大変だから、数本作って売り切ろうという軽い気持ちで。名前は、ウミスズメ(AUK)の熱意(ZEAL)から。海に潜って魚を捕る鳥と魚突きの重なりを感じた。以来つくってきたのは、最小限の動きで最大限のパフォーマンスを出す道具。富山での魚突きは、岸からすぐに深度が取れて、思い立ってから潜るまでの時間が短い。だから道具に求めるのも、特別な準備がいらないこと、日常的にストレスなく使えること。原点の「SMART」は、初速と取り回しに置いた1つの形。

 

ただ、残したいのは道具というわけではない。魚突きは、燃料を使わず、ゴミも出さず、必要な分だけを選んで獲る古代から続く営み。原始的であることが、そのまま持続的であることにつながっている。この文化を今の社会に置き直して、次の世代に渡したい。一般社団法人GREENspearfishersとのコラボレーションはその一環。廃漁網の鉛を使ったアップサイクルダイビングウエイトの共同開発、活動への道具サポートなどを行っている。

 

魚突きを通じて海への関心が高まり、世の中で海を大切にする気持ちが増えてくれれば、それが個人的に一番嬉しい。

 

室 伸太郎